本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
三分の二ほど埋まっている席は会社帰りのサラリーマンが多いようで、酔っぱらいの大きな笑い声がうるさい。

おおよそデートには相応しいと言えない店だが、真琴の胸はワクワクと高鳴った。

(香ばしい焼き魚と焼き鳥の匂い。ガスじゃなく炭火で焼いているみたい。火にこだわるなら食材もそうかも。期待が膨らむ。花福の新メニューになにか取り入れられるかもしれない)

若い女性店員が近づいてきたので、待ち合わせだと告げて店内を見回す。

守也はカウンター席に近い四人掛けテーブルにいた。

目が合って手を振ろうとした真琴の笑みが固まった。

(九波愛華さん。どうして守也くんと一緒にいるの?)

ふたりはボックスシートに隣り合って座っていて、守也が気まずそうに目を逸らしたのに対し、愛華は真琴に手を振って大げさなほどの笑みを向けてきた。

嫌な予感がした真琴は動悸を感じつつ、無意識に婚約指輪をはめている左手を強く握った。

しかし心の防御反応というべきか、その予感に気づくまいとして無理やり口角を上げて歩み寄る。
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