本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
その時の客は世間話のような軽い感じで話しかけてきたのに、真琴は否定するだけでなく夢や情熱まで語ってしまった。

(二年前は、ちょうどお父さんに店を継いでほしいと言われた頃。嬉しくて張りきっていたから、適当に話を合わせることができなかったんだ。今思うと恥ずかしい......)

本人も忘れていたこの出来事を、たまたま近くを通りかかっただけの修平がよく覚えていたものだと驚いてもいた。

「記憶力がいいんですね」

「いや、不必要な情報や興味のないことはすぐに忘れる。あの時の真琴は生き生きとした目をして、心からそう思っているのが伝わってきた。仕事に対する姿勢に感心したんだ。だから覚えていた」

天才外科医と呼ばれ数多くの命を救ってきた修平に褒められて、真琴はくすぐったい気持ちで頬を染めた。

(大手企業の会議で昼食の給仕をした時に、この仕事を見下されたことがある。単純な仕事で飽きないかと。エリートな人たちには私の仕事への情熱が伝わらないものだと思っていたけど、修平さんは違うんだ)

「今も思いは変わっていません。私は花福の仕事が好きだから今後も続けていきます」
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