本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
その他にも食器を一度に運んだり重たい鍋を持ち上げたりとなにかと力仕事が多いので、花福の仕事を夢だと言い切るなら小柄で華奢を求めるのはおかしいことになる。

(花福の仕事が一番大事なんだから、この体形でよかった)

目から鱗が落ちる思いでいたら、修平が真琴の頭をポンポンと叩いた。

「わかったようだな。今後は女らしさではなく、自分らしさを大切にしたらいい」

これまで真琴は誰かに傷つけられるのを恐れ、先に心の中で自分を卑下する癖がついていた。

それがコンプレックスを強固なものにしていたのだが、修平の物静かで淡白な語り口は心の防御層の隙間を縫うようにスッと入り込んで、奥にある暗いしこりを壊してくれた。

心が急に軽くなって、真琴は戸惑う。

(一体今まで、なにをそんなにこだわっていたんだろう)

その後には喜びと感謝の思いが込み上げ、修平に満面の笑みを向けた。

「ありがとうございます。これからは自分らしさを追求していきます」

頷いた修平の口の端は上がっていて、心なしかおかしそうな笑みを浮かべている。

「真琴は単純だな」

「す、すみません」

「褒め言葉だ。素直で真っすぐで、可愛い」
< 92 / 211 >

この作品をシェア

pagetop