本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
「かわ......!?」

可愛いと言われたのは幼少期までで、それも身内や近所のおじさんおばさんだけである。

しかし修平に冗談を言っている雰囲気はなく、真琴の胸はたちまち高鳴りだした。

「真琴」

修平の声に甘さを感じるのは気のせいだろうか。

彼の右手が真琴の頬に向けてゆっくりと伸ばされる。

うだるような暑さも、ここが人目のある業者用の駐車場であることも忘れそうになったが――。

微かにバイブ音がして、修平が真琴に伸ばしかけた手を胸ポケットに入れた。

取り出したのは院内用の携帯電話だ。

「はい。――そうですか。今行きます」

電話を切りポケットにしまった修平は、気乗りしないような低い声で言う。

「救急に患者が運ばれてくるから戻る」

徳明会病院内には救急救命センターがあり、訪問販売中に救急車のサイレンを聞くのも珍しくない。

運ばれてくる患者の容体に合わせて専門医が救急救命センターに呼ばれ、治療にあたっているそうだ。

「あ、はい。頑張ってください......」

急いでいるようには見えない普通の歩調で、建物の方へ去っていく背を見送り、真琴は違和感を持った。
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