双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「ああ~。撮影、みんなしてますよね。私はお店側に許可を取るのがちょっと苦手で。というか、食欲に負けて先に食べちゃったり」
 これまでの自分の行動を宙を見て思い返す。どれも女子力というものがない行動だったのかもしれない。
 そんな自分でも、楢崎さんみたいなハイスペックな男性とこうしてお茶をしているのだから人生はわからないものだ。
「そうだったんだ。僕が許可を取ればよかったね」
「あ! いいんです! 私は目に焼きつける派なので」
「目に?」
 私の珍回答に楢崎さんはまた「ふふっ」と笑いだす。
 彼が楽しそうにしているのを見てほっとすると同時に、うれしくなった。
「それにスタッフの人にも時間を割かせるのが申し訳ないんですよね。私はSNSとかしているわけでもないし、お店になにも貢献できないから」
 そうかといって、周りのお客さんがスタッフに声をかけていてもなにも思いはしない。あくまで『自分』がしたと仮定した時の感情だ。
「まあでも、さっきの話に戻しますと、一番先に来る理由はやっぱり〝好きだから〟なんですよねえ」
 照れ笑いをして、私はもうひと口カフェラテを飲む。カップを戻す直前、テーブルの上に置いたままの手帳を見て閃いた。
「ちょっとすみません」
 私はひとこと断り、彼の反応も見ぬ前に手帳を開いてペンを走らせる。
 今感じたことを忘れないように記録を残そう。箇条書きでもなんでも言葉に残しておけば、後から確認できるし、今日の感情を思い出せるかもしれない。記憶は案外薄れたりするから。
 楢崎さんはコーヒーに視線を注ぎ、再び静かにカップを持ち上げる。
「やっぱり昔から本質はそのまま変わらないんだ」
「え?」
「古関さん。アルバイトの頃から仕事に熱心で凛としていて、すごく輝いてる」
 彼の双眼が私を捕らえると同時に、緩やかに目が細められた。
 誰かにここまでストレートに褒められることはないため、右往左往してしまう。
「や、あの......ありがとう、ございます」
「いいえ。僕はただ思ったことを言っただけだから」
 さらりと答えてコーヒーを口に含む彼を見つめる。それから、楢崎さんの会社についてなど詳しいところまで聞いていいものかどうか逡巡し、結局私からは触れなかった。
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