双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 予想していたからといって、納得するのとは別問題。
 私が手のやり場を失って途方に暮れていると、彼がポンと頭に手を置いた。
「じゃあ、代わりにもう一か所付き合ってもらえる?」
 連休中で明日も仕事はない。それにデートの延長をしてくれるほうが私もうれしい。
 断る理由もなく、ふたつ返事で了承した。
 十数分後、私がやってきたのは車ですぐのラグジュアリーホテル。ホテル業界ではホテルオークスプラチナほどではないらしいけれど、私にとっては十分立派で高級なホテルだった。
 すでに食事も終わっているし、バーでも行くのかな。
 そう思いつつ彼の後をついていく。向かった先は上ではなく、地下。
 なんとなくイメージ的にはレストランやバーなら、上層階の素敵なパノラマビューが望める場所にあるものだと思っていた。
 地下といっても殺風景な感じではない。ブラケットライトで落ち着いた明るさになっていて、煌びやかなロビーとは違い、落ち着いた大人の空間だ。
 重厚そうな扉を押し開けると、横に長い室内だった。数メートル歩みを進めるとバーカウンターが。そして、カウンターから見渡せるように、数台のビリヤードの台が設置されている。
「うわあ、広い。ここはビリヤードとバーが一緒になっているんですか?」
「そう。プールバー。会員制だからゲストとバーテンダーも顔見知りな感じで、アットホームな居心地のいいバーだよ。僕が時間がある時に来るところ」
 雄吾さんの私生活を垣間見ることができて、私はこっそり喜んだ。
 今私にゲストとバーテンダーの人とが良好な関係だと説明してくれた通り、彼はカウンター越しにバーテンダーの男性と和気あいあいと話をしている。
「春奈さん。なにをオーダーしようか」
 私たちはカウンター席に並んで腰をかける。
「あ。えっと、あっさりした軽めのものを」
「なら、そのまま伝えよう」
 雄吾さんは慣れた様子でバーテンダーと談笑しながらオーダーを済ませる。
 私が後方のビリヤード台を順に目で追っていると、聞かれた。
「ビリヤード、好き?」
「実は大学時代にハマってたんです。懐かしいな~と思って眺めてました」
「そうなの? じゃあさ。一杯飲んだ後、春奈さん、僕と勝負しない?」
 急な話の展開に目を瞬かせる。雄吾さんを見れば、少年みたいにキラキラした瞳で私を見ていた。
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