双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「ふふふ。よし。じゃあ、僕もなにかしら学んで帰ろう。こういう分野は尚吾が得意なんだ。あ、尚吾って覚えてる? 僕の弟なんだけど」
「もちろん。水族館で同じ名前の子がいて印象的だった」
 尚吾さんが本好きなんだ。それをいったら、うちも私より海斗のほうが本を読んでいたな。って、話をしたいとこなのに、海斗に口止めされてるから言えない。
「尚吾は小さい時から本ばかり読んでいて、どこへ行くにも必ず手に持っていた。そんなやつなんだ」
「へえ。そういう話を聞くと、ちょっとイメージ膨らむかも」
 出かける際にいつも読書しているとなると、寡黙で真面目な人なのかな? 顔立ちはきっと雄吾さんに負けず劣らず美形だよね。うん。なんだかそこはわけもなく自信がある。
 ひとりで空想に耽っていると、雄吾さんが私の手を引き歩みを進めた。
「そのうち紹介するよ」
 彼のひとことに私は頷いて、いつか来るであろう未来に胸を弾ませた。
 その後、館内を回り終え、目的のカフェでひと息つく。
 私は定番のカフェラテと、ホットサンド。雄吾さんはホットコーヒーとホットドックをオーダーしていた。
 パンの焼き加減が最高だし、サンドされているタマゴが絶品。
「これ、ゆで卵じゃなくてスクランブルエッグなんだ。すごく美味しい」
「へえ。やっぱり人気があるわけだ」
「ひと口食べる? 同じ卵でもこんなふうに変化あるんだ~ってなると思......」
 話の流れでなにげなく手に持っていたホットサンドを雄吾さんへ差し出した。するとふいに彼が上体を前に倒し、顔を近づけてくる。
 伏せられた長い睫毛と、前髪の生え際が間近に見える。時間差で彼の香りがふわっと鼻腔に届いて、ますます緊張してホットサンドを落としてしまいそう。
 てっきり手渡しで受け取ってから食べるものだと思っていたから、予想外の行動にどぎまぎする。
「ん、美味しい。たしかに触感がふわっとしてるね」
 私の動揺に気づいていない雄吾さんは、なにもなかったように感想を口にした。
 そこまで騒ぐほどのシチュエーションではなかったかもしれない。だけど、恋愛にブランクのある私にとってはふいうちの出来事だった。
 茫然と固まっていると、彼は私の様子を見て別方向に解釈したらしく、ホットドックを持って差し出す。
「ああ、こっちも食べる?」
「ううん! だ、大丈夫!」
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