双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「お酒。ふたりで飲もうか?って言ったんだよ? 飲んだら僕は運転できないし、もう遅いから春奈をひとりでタクシーに乗せるのも心配だ。だから、泊まって行ってね。明日、予定ないんだろう?」
 したり顔で流暢に状況を並べる雄吾さんに、私はどぎまぎするばかり。
「えっ、えっ。で、でも雄吾さんの予定......」
「僕も予定を入れないようにした。先週会えなかった分、春奈とゆっくり過ごしたいと思っていたからね」
 彼はいつもの優しい笑顔でそう説明する。でも、私の頬を撫でる手つきや今にも口づけられそうな距離感に、私の胸は高鳴る一方。
 堪らず視線を落としたものの、彼の大きな手のひらに顔を包まれて逃げきれない。
「あれ? 春奈、まだ飲んでないのに顔が赤いよ」
 私は火照った頬のままぽつりと零す。
「......狡い。理由なんて、本当は気づいているんでしょう?」
 恥かしさで潤んだ瞳をゆっくり彼に向けると、うれしそうに口元を緩めていた。
「うん、気づいてる」
 彼はそう答えるや否や添えていた手で私の顔を上向きにし、唇を奪う。
 物腰の柔らかな彼からは想像もつかないほど、情熱的なキスに私はいまだに翻弄される。
「――んっ、はぁ」
 何度も角度を変え、触れ方を変えて繰り返されるキスは、私を簡単に酔わせる。
 きっと、どんなに強いお酒だって敵わない。私をこんなふうに気持ちよく恍惚とさせるのは、彼だけ。
 私は彼の首に手を回し、すべてを受け入れながら自然と口からこぼれ落ちる。
「ゆ......ご、さ......好き」
 こんなに誰かに溺れた記憶がない。
 どうしよう。彼の存在が私の中で大きくなっていくばかり。このままだと、彼なしではいられなくなるかもしれない。
 ぎゅっと腕に力を込めると、彼はそれに応えるように深く口づける。そして、そっと距離を取った直後に耳元で言われる。
「僕も......好きだよ」
 一瞬過った不安さえも彼の甘い声でかき消され、私はそのまま彼の腕に抱かれた。

 その日、私が出社すると、すでに席に着いていた先輩社員ふたりが楽しそうに雑談を交わしていた。
「お。その経済誌、俺も昨日読んだよ。今回あの人載ってたよな」
「あの人? 俺まだ読み始めたばっかりでわかんないや」
 私の席からそこそこ近い距離なのもあり、聞き耳を立てずとも勝手に会話が耳に入ってくる。
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