双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 私の身体を引き寄せると、ぎゅっと抱きしめてつぶやく。
「だけど、どうしても会いたかった」
 彼の表情は見えない。だけど今の声音から、私と同じ気持ちだと伝わる。
「......私も」
 感極まって彼の背中に両腕を回す。
 雄吾さんとの関係は平穏でひだまりのような温かさで、とても心地いい。
 その居心地のよさを知ってしまったから、私は気づけば変わらない関係に対して安定よりも不安が募っているのだと察した。
 自分たちの関係を言葉で説明するなら恋人同士。けれど、他人だ。
 周りから彼の素晴らしい功績や評判を耳にするたび、心が焦れた。確かな約束がほしいと思ってしまう自分に、本当は気づいていた。
 でもそれは浅ましい思いだとずっと感情を抑えてきたが、変な方向へ思い悩むくらいならいっそ私から――。
「一緒になろう」
「え?」
『どんな形でもいい。一緒にいたい』と伝える直前、雄吾さんからも同様のセリフが出てきて驚き固まった。
 腕を緩め、彼の顔を窺う。雄吾さんはこの上ないほど真剣な面持ちで、けれどやっぱりどこか焦燥感に駆られたような表情も残しながら続けた。
「春奈、僕と結婚して」
 ふいうちのプロポーズだった。
 驚倒するばかりで、言葉を発するどころか瞬きさえもできずに静止する。
 私がなにも言えずにいたせいで、雄吾さんは顔を顰めて項垂れた。
「......っ、はあ。違う。ごめん」
 すぐさま否定する彼の言動に、胸が切り裂かれる感覚に襲われる。
 今のは勢い余って口にしただけで、冷静になってやっぱり取り消したくなったのかと想像すると居た堪れなくなった。
 私は彼の一挙一動に翻弄される。だから、ぬか喜びをしがちなのではないかと思い、自ら気持ちを戒める。
「ううん。雄吾さんはそういう話を慎重に考えなけばならない立場だし、私、ちゃんと聞かなかったことにするから気にすることな――」
「そうじゃない! そうじゃなくて」
 言葉を遮られ、咄嗟に口を噤む。
 雄吾さんは眉間に深い皺を作り、きつく目を閉じて長い息を吐いた。
「こんな風に勢い任せにプロポーズするつもりではなかったから。もっとちゃんと計画してたのに、自分で台無しにしてしまったなと思って」
 彼の話を聞いて茫然とする。
 まさか、本当に私と?
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