双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「さ、さっき言ってた......恋人、なの」
 突然雄吾さんが現れ、三橋くんに紹介することとなり動揺で声が尻すぼみする。
 この期に及んで、街中に立っていてもどこか周囲の人とは違い、カッコよさと仕事ができるオーラを出している雄吾さんを『恋人』だと宣言するのに気が引けた。
 お酒が入るとダメだ。なんだか弱気な部分が出てきてしまう。
「もう歓迎会は終わった?」
「う、うん。今帰ろうとしてて、三橋くんが駅まで送るって言ってくれてて」
 雄吾さんに確認されて答えると、彼は三橋くんに向かって会釈をする。
「すみません。ありがとうございました。ここからは僕が一緒なので大丈夫ですよ」
 雄吾さんは優しい笑顔で言いながら、私の肩をさりげなく抱いた。
「あ......わかりました。じゃあ古関。俺、戻るわ」
「うん。ありがとう」
 私はそそくさと去っていく三橋くんの背中を見送った。
 雄吾さんとふたりになり、改めてさっきの手を取られていた光景をどう説明しようか悩む。潔白だけれど、雰囲気的に向こうは好意を持ってくれていた気もするだけに、ちょっと後ろ暗い。
 第一声を出せずにいたら、先に雄吾さんが口を開いた。
「春奈、これからうちにおいで」
「えっ」
「明日会う予定になっていたし、このまま一緒にいても問題ないだろう? ここからなら春奈の家より、うちに行くほうが近いし。着替えは前にうちに来た時に置いていったものがあるから」
 そう言って私の手を引き、歩き出す。
 明日会えることになって、すごくうれしかった。だから、前日である今日から一緒にいられるのは私にとって棚から牡丹餅だ。
 だけど、なんだか彼との空気が微妙になっているのが引っかかる。
 雄吾さんは駅の方向とは別の道を歩いていく。車で来てくれたのかもしれない。
 私は彼の背中にぽつりと投げかける。
「雄吾さん、もしかして迎えに来てくれたの......?」
 さっき、偶然会ったとは考えにくい。
 雄吾さんのオフィスは新宿区で近くはないし、自宅までのルートからも外れている。きっと、私が大体の場所とともに二次会に参加する旨をメッセージを送っていたから。
 すると、彼が足を止め、こちらを振り返って答える。
「ああ」
 やっぱり。まさかこんなことをしてくれるとは思わず、なにも考えないでメッセージを送ってしまった。
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