双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「あの、どちら様でしょうか」
 これほど美人な女性なら記憶に残っている。でも、まったく見覚えがないのに、相手は私のフルネームを知っているのは一体どういうことか。
 不審に思い、窺うような態度で質問すると、彼女は堂々と名刺を出してこちらに差し出してきた。
「突然すみません。私は『ウダガワトラベル株式会社』の宇田川と申します」
 おずおずと受け取った名刺に視線を落とす。ツアー会社で有名なところだ。しかも今、彼女が名乗った名字と社名が一緒ということは、会社を経営する側の人と血縁関係がある?
 彼女の正体はある程度予測できるものの、用件はさっぱりだ。
 大体なぜ彼女は私を知っているの? まったく面識も関わりもないのに。
 やや不信感を抱いていると、宇田川さんは丁重に頭を下げる。
「突然お声がけをして、しかも事前に古関さんのことを調べさせていただいたこと、先にお詫びします」
「えっ、調べ......?」
 きちっとした印象の彼女だからこそ、謝罪されている内容とミスマッチで困惑する。
 詳細を尋ねる余裕もなく、ただ茫然と彼女を見つめてると、深刻そうな表情で言われた。
「私は楢崎尚吾さんと大学時代の友人です」
「楢崎?」
 尚吾って......雄吾さんの弟だ。宇田川さんは、弟さんの友人なんだ。でも、それでなぜ私に?
 頭の中は疑問だらけ。けれど、ここ数日の悩みもあってか、脳の動きが鈍い。
 戸惑う私に、彼女は落ち着いた声音で言う。
「少し、私の話を聞いていただけますか?」
〝楢崎〟という名が出れば、警戒心は薄れて代わりに『話』の内容に関心を引かれる。
 気づけば私は首を縦に振っていて、彼女に誘われるまま近くのカフェに入店していた。そしてコーヒーを前に、向かい合って話を聞く。
 彼女の説明を整理するとこうだ。
 これまで仕事ひと筋の尚吾さんに、突如縁談が持ち上がった。大学の頃から彼を知る彼女から見ると、今回の縁談はあまりに不自然に思えたため、彼のために内情を確認したいのだ、と。
 しかしながら、そこまで丁寧に説明してくれたものの、結局その件について私がどう関わっているのかがさっぱりだった。
 すると、宇田川さんが凛とした表情で質問する。
「あなたはお兄様である雄吾さんの恋人でいらっしゃいますよね?」
 私はおずおず頷く。その反応を見た彼女は、さらに聞いてくる。
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