双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 雄吾さんと同じ車が前方で信号待ちをしている。彼の車は外国製で、色はスタンダードなホワイト。2ドアでスタイリッシュなフォルムだから周りの車の中で一段と目を引く。ナンバーはこの角度からは見えない。
 いやでも、滅多に見ない車種ではあるけれど、同じ車に乗っている人だっているだろうし......まさかそんな。
 嫌な動悸がして思わず立ち止まったまま動けなくなった。
 その車は信号が青になると、ゆっくり左折をした。私は頭で考えるよりも先にその車を追いかける。すると、道路を挟んだ向かい側にそびえたつタワーマンションへ入っていった。私はエントランスが見える場所で物陰に身を潜め、様子を見る。
 ここは雄吾さんのマンションではない。どうしてこんなことをしているのだろう。自分で自分がわからない。ただ、なんだか嫌な予感がする。
 目を凝らして動向を窺っていると、止まった車から男女ふたりが降りてきた。男性の姿を見て息が止まる。
 やっぱり、雄吾さんだ――。
 多少離れていても、スタイルのよさや立ち居振る舞いから、私は彼だと確信する。まさか彼の九頭身近いモデル体型が仇となるなんて。
 愕然としながらも、瞳にはふたりの姿を映し出す。雄吾さんは車のトランクを開けてオレンジベースの花束を手に取り、彼女に渡していた。
 女性は......ここから見てもわかるくらいにすごく喜んでその花束を受け取った。
 はっきりとはしないけれど、二十代くらいの雰囲気の人。ふわっとした印象の服装で、清潔感がある。たとえるなら、お嬢様のような――。
 そこまで考えてはっとする。
 もしや、あの女性が樫山果乃子さんなのでは? 雄吾さんのスマートフォンが見えた時、年齢は二十五歳となっていた。そのくらいの年齢と言われたら、そうとしか見えなくなる。樫山フードのご令嬢なら、あの若さで立派なタワーマンションに住んでいても納得がいく。
 雄吾さんは、さらになにか紙袋を手渡して、彼女と別れて車に乗って行ってしまった。その女性は、雄吾さんの車が見えなくなるまでずっと、彼の車を見送っていた。
 車が完全に行ってしまうと、彼女は踵を返し、エントランスの自動ドアへ歩きだす。その際、愛しそうに花束にキスをして。
「――っはぁ、はぁ」
 いつから息を止めていたかも覚えていない。
 呼吸が苦しくなって、肩で息を繰り返す。
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