双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「最後に一回だけ会ってくる。それで、海斗が都合のいい日にしてくれる? ふたりの面倒見てほしいの。いいかな......?」
 胸の前できゅっと手を握り、決意を固める。
「わかったよ」
「本当にいろいろありがとう。今度お礼するから」
 今回だけでなく、これまで海斗がいなかったら私はもっと大変だった。海斗は態度や
言葉はぶっきらぼうだったりするけれど、家族思いの頼れる弟だ。
「じゃあ、ふたりが起きたら困るから私は部屋に戻るね」
「ハル」
「うん?」
 部屋を出ようとした時に、呼び止められる。振り返ると、海斗がいつにもまして深刻そうな顔つきをしていた。
「前々から話してたけど俺、来春ほぼ異動確実だからさ。穂貴と詩穂の面倒みてやれるのもそれまでだわ」
「あ、そうだよね。ごめんね、いつも甘えて」
「いや。そうじゃなくて」
「え?」
 言下に否定されて戸惑っていると、どこか照れくさそうに顔を背けて言われる。
「俺が父親代わりになれるのもあと半年だ。ま、父親がいればいいってわけでもないけど、あのふたりはアクロバットな遊び好きだろ? ハルにはきついぞって話!」
 私にはきついって......。いや、確かに穂貴と詩穂が大きくなるにつれ、感じていることではある。
「んじゃ、俺も風呂行ってくるわ」
 海斗は私の前を横切って、先に部屋を出て行ってしまった。
 私はその後も少しそのままで、海斗の言葉の真意を探る。
「あっ」
 なんとなく言わんとしていることが分かった気がする。
 海斗は私の話しか聞いてこなかったせいもあって、雄吾さんに対するイメージは悪かったと思う。でも、今日本人と会ってなにか変わったのかもしれない。
 海斗が雄吾さんのことをちょっとでも認めてくれたのかもと思うと、少しうれしいというか、安心に似た気持ちを抱く。
 そんなふうに感じるなんて、自分はすごく勝手な人間だ。
 だけど、本当は雄吾さんを嫌いになって離れたわけじゃないんだもの。
 私は、子どもたちのことも踏まえ、感情的にならずにきちんと雄吾さんと向き合わなければならない。
 おもむろに瞼を下ろすと、ありありと蘇るあの日の光景。
 ――『ごめんなさい。ありがとう、さようなら』
 二年前の私は、そうやってありきたりの単語を並べ、曖昧にして一方的に別れを告げた。
〝ひとりで決めて、お腹の子の事実も言わずに〟ごめんなさい。
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