双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
 実は今日のことも、両親へは詳細を伏せてある。単に友人と食事に行ってくるとだけ伝えていた。それは全部海斗の提案だった。
 実の父親とのいざこざを説明すれば、両親に心配させるだろう。話がきっちりまとまるまでは俺が聞いてやるから、両親には結果を報告すればいい、と。
 経過を話すことが悪いわけではないが、余計な心労をかけたくないというのが海斗のスタンスなのだと思った。
 海斗は昔も、雄吾さんを紹介しようとした時に、挨拶は百パーセント家族になるって決めた後でいいと断固として譲らなかったから。
 私はバッグを肩にかけ、海斗のもとへ歩みを進める。
「うん。海斗、本当にありがと。お願いね」
「ああ」
 そうして、子どもたちに悟られないようにパンプスを手に持ち、裏口から出て待ち合わせ場所へ向かった。

 海に面した立地にある三十階以上ある高層ホテルを前に、改めてこれからここへ足を踏み入れるのだと息を呑んだ。
 約束の時間は午後七時。腕時計に目を落とせば、今は午後六時三十五分だった。
 まだ余裕があると確認した私はエントランスを通り、ロビーに向かう。ロビーを見た瞬間、圧倒されて口が開いてしまった。
 白を基調としたロビー内は、シャンデリアなどの照明の豪華さも手伝ってとても明るい。さわやかさと清潔感もある。
 圧倒されながら、綺麗に磨かれたロビーを歩き、一番端に設置されていたソファに腰を下ろす。膝の上で両手を合わせて握り、瞼を閉じた。
 これまで生きてきた中で、一番緊張している。過去の緊張エピソードなんか比じゃないほど。
 私はゆっくり視界を広げていき、遠くを見つめる。
 まさかこんな日が来るなんて。
 一生彼と会うことはないと思って生きてきた。それが今や、奇しくも再会を果たし、しまいには子どもがいるのを知られる始末。
 ただ、今のところ穂貴と詩穂と血が繋がっているとは思っていないみたいだから、そこはよかった。だって、自分の血を引いた子どもだと知ってしまったら彼は傷つき悩むだろうから。
 ひとりでいろいろと考えていたら、ふっと影になったのに気づいて顔を上げた。見上げた先には雄吾さんが立っている。
 ダークブラウンのジャケットとパンツのセットアップ。上品なハイゲージニットから覗くライトブルーのシャツは、雄吾さんらしい清涼な印象を与えていた。
「相変わらず早いね」
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