監察医と魔法使い 二つの世界が交わる時
冬都がチラリと目を向けた時、星夜の手を握りながら蘭だけは冷静な目をしていたのである。手を繋いでいない左手で、蘭はブローチを握り締めていた。

「法医学の、希望に」

凛とした声が響く中、辺りは紫の煙で何も見えなくなっていく。冬都の手を凛都が包んだ。

「冬都、大丈夫だからな」

「……別に、不安に感じてるわけじゃないよ。みんなと一緒だし、これまでも色んな出来事を乗り越えてきたじゃん」

相手は多くの魔法使いや人の命を奪っている。冬都一人ならば、とっくに諦めていただろう。だが、ここには一人も欠けることなく仲間がいてくれる。それだけで冬都の中で大きな勇気と希望になるのだ。

戦いが、幕を開ける。



煙が消えた後、冬都たちの目の前にあったのは荒れ果てた大地だった。足元はゴツゴツとした岩がいくつもあり、周りには木々や水辺はなく、動物の姿もない。

「屋敷が消えた?」

不思議そうにする大智に、ソラが「異空間を作り出して、そこに私たちを閉じ込めたのよ」と説明する。ロイドは「その通り!」と言い、笑った。
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