秘め事は社長室で
で。
警察と救急が来て、軽く事情聴取を受けて。今日は一旦解散にしましょうか、と雰囲気が和んだ時にはもう日付が変わっていた。
それはいい。それはいい、のだけど。
「しゃ、社長」
「なんだ」
「あの私、やっぱり……!」
怖気づく私を、ジトっとした視線が睨む。
「……」
社長が無言で何かのカードをよくわからない機械に翳すと、目の前の自動ドアが無情に開いて。
現れたのは、高級ホテルもかくやといった豪華なエントランスだった。
勿論、ホテルなんかではない。ない、けど。
「いいから入れ。心配しなくても何もしない」
どうしてこんなことに。と、夜闇を貫くように聳え立つ高層マンションを前に、私は途方に暮れてしまった。
シャンデリアの眩しさに目を細めながら足を踏み入れる。すると、夜中だというのにきっちりスーツを着込んだ初老の男性がカウンターに常駐していてぎょっとした。
男性は目が合うと柔らかく微笑んでくれて、つられて会釈する私の横を真顔で通り抜ける社長。
えええ、と思いながら慌てて後ろをついていくと、エレベーターに乗り込んだ社長は先ほどのカードをエレベーター内の機械にまた翳した。すると電光パネルにぴこんと高層階の数字が表示される。
「うわ、こんなところまで」
「基本的に住む階にしか停まれないようになってんだよ」
「すご……」
「あのボロセキュリティのアパートに帰るよりマシだっただろ」
「……」
ムッとして黙る。
どんなアパートもここに比べりゃボロでしょうよ。
ちらりと見上げると、どこか満足そうな、勝ち誇ったような目と合ってまたちょっとムカつく。
「でも、やっぱり申し訳なかったかなと」