秘め事は社長室で


「そんなに気になるなら一緒に入るか」
「は!?」
「俺より先に入るのは忍びないんだろ」


ほら、と手首を軽く掴まれて、どうやら浴室へと続くらしいドアの先に押し込まれる。


「ちょっと……!」


文句を言おうとして、でも開いた口はそのまま固定されてしまった。

社長が、服を脱ぎだしたから。

ジャケットは無造作にその辺に脱ぎ捨てられ、細い指がシャツのボタンに掛かったところでハッとする。

何を見せられてるんだ一体!


「ちょ、何してんですか!? セクハラですか!」
「失礼だな」
「失礼だな、じゃないんですよ! あーもう分かりました、分かりましたから! 入りますから出てってください! ジャケットもこんな雑に脱ぎ捨てないでください!」


絶対高いスーツなのに、扱いが乱暴すぎて恐ろしい。

変な皺が出来ないようにジャケットを拾って、社長に押し付けながら脱衣所から追い出す。存外すんなり応じてくれた社長は、「何かあれば浴室内にインターホンあるから」と言い残して出て行った。

お風呂はそれはもう快適だった。足を伸ばしてもなお余裕のある浴槽に、やたらといい香りのシャンプー類。

浴室から出ると未開封のスキンケア一式に着替え、ふわふわのバスタオルが準備されていて、本当に高級ホテルに泊まりに来たのではないかと錯覚してしまいそうだ。

化粧水と乳液を急いで叩き込んで、これまた新品の女物のスウェットを頭から被り、廊下に飛び出す。突き当り、煌々と光の漏れる一室に当たりをつけて扉を開けた。


「社長!」

やや勢いよく開けた先、広がるモデルルームのような一室。

部屋の広さと家具の少なさが若干ミスマッチなその部屋に、予想通り社長は居た。


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