密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
私、透真さんと全然釣り合っていないけれど大丈夫だろうか……。
透真さんがハンドルを握る隣で不安を抱いていると、車が停車した。

「あの、透真さん。ここは……?」

やって来たのは、映画館じゃないのは一目瞭然。
一等地にある有名ブランドの路面店の前だった。

「映画が始まる時間までに、洋服をプレゼントする」
「え! こ、こんな高級店で⁉」

車を降り、平然と足を進める透真さんの数歩後ろで私が躊躇すると、彼は肩越しに振り向いた。

「せっかくのデートだからな」

クイッと口角を上げ、片目だけを器用に細める。
不意打ちの極上笑顔に、私の心臓は花火のようにどくんと高鳴った。

デート……。
甘い響きに胸が躍る。

「いらっしゃいませ、君塚様」

入店すると、スタッフがすぐに私たちを迎えた。

「妻にドレスを見立ててくれ。これからデートなんだ」
「お、奥様でいらっしゃいますか⁉」

スタッフが目をむく。
そして透真さんの後ろにひっそり佇む私を二度見するという、正直な反応を見せた。

こんな素敵な男性の妻が地味な私だなんて、信じられないよね……。

「ただいまオススメのものをお持ちしますね」

スタッフはすぐにワンピースを何点か持ってきてくれた。

こういうとき、もちろんお客様の体型やお好みに合わせて臨機応変に対応するけれど、だいだいオススメする商品は決まっている。
セレクトショップに勤めていたからわかる。私も何点か気に入っているコーディネートがあって、接客の内容も暗記していたっけ。

「こちらはフラワープリントシリーズの新商品でして、とっても人気のワンピースなんですよ」

戻ってきたスタッフが、ハンガーにかけたワンピースを私と透真さんに掲げて見せた。
ここのブランドのフラワープリントは人気のシリーズで、とても手が出ない値段だけど憧れていた。

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