密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
「こういったアクセサリーを合わせても素敵ですし、靴はこちらが似合うかと思いますがいかがでしょう」

コーディネートを什器の上に広げるスタッフのてきぱきとした仕事ぶりを見て、私もセレクトショップで接客していた頃を思い出す。
あんな形じゃなければ、もっと続けていたかったな……。

百瀬(ももせ)肇(はじめ)店長も、サブ店長の葉山(はやま)玲子(れいこ)さんもすごくいい人で、接客だから大変なときもあったけど、予算達成を目指してがんばっていた。

バリバリ働いてた頃が懐かしくて、コーディネートをオススメしてくれたスタッフを、羨望の眼差しで見てしまう。

「ご試着いかがですか?」

にこやかに問われ、私はハッとした。

「え、あの……」

全部合わせたら桁外れな金額になりそうだし、果たして私に似合うのだろうか。
躊躇っていると、透真さんがトンと私の背中を押した。

「きみに似合うと俺が保証する」
「そ、そうでしょうか」

私は曖昧にうなずき、スタッフとともに試着室に向かう。

白地にピンク色の花柄がとてもかわいいワンピースは、袖はふんわりとシフォン素材で、スカートは膝丈より少し短く揺れてとても綺麗。

「わあ! とてもお似合いですよ!」

スタッフに褒められ、私は頬を熱くする。お世辞でもうれしかった。

今日は髪を下ろして来た。メイクも出掛けに直してよかった。
さすがにハイブランドのワンピースとあって、ラインも美しく見栄えがする。

けれども鏡に映る自分は、浮かない顔をして
いた。

「きみの好みじゃないなら、別のものにしよう」

私の表情に気づいたのか、透真さんが静かに言った。
仕事ができるスタッフがすぐにほかのものを取りに行く。
< 28 / 80 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop