密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
「無理、ですよね?」

わかってる。だから私はぎこちなく笑った。

最後の最後にこんなお願いをして、引かれても仕方ない。

期間限定の夫婦生活は、ほろ苦い思い出になってしまった。
そう思い、がっくりと肩を落とす。

すると、俯き加減の透真さんは鼻先を指で擦り、クスッと笑った。

「ああ、無理だ」

わかってはいたけれど、はっきり言われると胸にグサッと突き刺さる。
痛む胸を手で押さえ、うなだれたときだった。

「きみが甘えてくれるのはうれしいが、理性を保つ自信がない」

真っ直ぐにこちらを見つめる透真さんの言葉に、私は耳を疑った。

「あの夜も、酔っているきみを強引に抱いてしまったこと、ずっと後悔していたんだ」

静かに、けれども力強く話す透真さんから、揺るがない眼差しが盛大に戸惑う私に注がれる。

「あ、あのときは私、たしかに酔っていましたけど、透真さんの言葉がうれしかったんです。それに祖父母を慕ってくれていた温かい気持ちに身を委ねたいと思ったので……」

私は自分の思いの丈を正直に伝える。

すると、決して私から目をそらさずに一歩間合いを詰めた透真さんは、伸ばした手で私の頬を擦った。

「初めて会った日のきみは消えてしまいそうで心配したけど、この三ヶ月ですごく綺麗になった」

心地よく、刺激的な透真さんの手のひらの感触。しかし今はそれに酔いしれている場合ではない。

顔に角度をつけた透真さんが、私の口もとに唇を寄せる。

心臓がドキドキとうるさすぎて、この至近距離では透真さんにも聞こえているんじゃないかと思った。速まる鼓動は衰えを知らずに、私の気持ちをたかぶらせる。

「……っん」

触れるくらいの優しいキスは、やがてお互いの唇を食み、舌を絡ませ、息もできないほどの深いものに変わる。
透真さんの口の中の温度がとても濃厚に伝わってきた。
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