密かに出産するはずが、迎えにきた御曹司に情熱愛で囲い落とされました
入籍してちょうど明日で三ヶ月となる日の夜。
夕飯を終え、私は離婚届に記入した。透真さんが提出してくれるというので、印鑑を預ける。

「無事に受理されたら、区役所から通知が郵送されるから」
「はい、わかりました」

寂しい気持ちを押さえ、私は箱に入れて包装したプレゼントを透真さんに差し出した。

「透真さん、三ヶ月間本当にお世話になりました。これ、ほんの気持ちです」

きょとんとした透真さんは、私の顔と手もとの箱を見比べる。

「俺に?」

私がこくこくとうなずくと、透真さんはやや戸惑った様子で箱を受け取った。

「ありがとう。開けてみても?」
「はい、もちろんです」

丁寧に包みを開け、箱の中身を見た透真さんが目を見開く。

「これ……」
「名刺入れです。祖母が遺した名刺のおかげで透真さんと出会えましたから、記念というか。透真さんには本当に感謝してます」

箱から名刺入れを出し、じっくりと吟味するように見つめ、手に持った透真さんが頬を綻ばせた。

「すごく気に入ったよ。ありがとう」

お礼を言われ、私は照れながら微笑んだ。
喜んでもらえてよかったと、胸をなで下ろす。

「まさかプレゼントを用意してくれているとは思わなかったから、俺からはなにもないんだ」
「そんな、いいんです。透真さんからはもう、たくさいただいてますから」
「そんなわけにはいかない。お返しに今日、俺にできることならなんでもする」

透真さんの顔からは笑顔が消え、真剣そのもの。 
お返し?本当になんでもしてくれるの……?

頼めるのは今日しかない。明日にはここを出て行くのだから。
すくみそうになる両足に力を込め、私は決意を固めた。

「それでしたら、できれば今夜、一緒に寝てほしいです……」

こんな大それた願い事を伝えるなんて、自分が信じられない。言ってから、取り消したいと希望したってもう遅い。

案の定、とんでもないお返しを要求された透真さんは放心しているようだった。

「なんだかその、最後の夜だと思うと寂しくて……」

最後の一夜に思い出として、朝まで一緒に過ごしたい。
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