その瞳に映すもの

 「そうだね……。僕の保護者は一度も僕

のコンクールや大会、発表会みたいな物に

は来た事無かったね。学校行事も含めて全

て、来なかったね。……君は優しいよ

ね……。僕の事、綾瀬君って呼んでくれてい

るけど、ホントは橘椿の方で覚えていたは

ずなのに……。……今、僕の保護者が父親

と母親じゃなくて、別の親戚と暮らしてい

るんだけど、最近になって、僕ってちょっと

おかしかったのかなぁ?って思ってて

ね……。何となくだけど、僕と同じ位の熱

量で努力している人ってこの中にいないんで

しょ?……そこにいる担任なんて、ぽっか

ーんとしてるし……。一応、僕の場合、都

合が合えば家政婦さんが僕の事を見に来て

くれていたよ。沢山の表彰状やトロフィー

があっても結局僕の事を見てくれる事の無か

った僕の保護者?だけど、君の記憶に残っ

ているなら、それで良かったかな……」

 「……僕は、綾瀬君がコンクール会場で

出場者の人達が家族に囲まれているのを羨

ましそうに見ていた姿がずっと忘れられな

かったんです。綾瀬君のピアノはとても凄い

のに、あの時、綾瀬君1番だったのに……」
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