ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~
 だから彼に対する親しみが増すほど私はなんだかいたたまれない気持ちになっている。

「さて、ケーキも食べ終わったところで……。リルアさん」

「は、はい」

「内緒話をしませんか?」

 私が最後に残しておいたいちごを口の中に入れるのを確認すると、レオンハルト様は改まって真剣な表情を見せた。

 どうやらなにか誰にも聞かせたくない真面目な話があるらしい。

「内緒話ですか? 私は構いませんが……」

「よろしい。ゼルナーさん、申し訳ありませんが少しの間この食堂から離れていてください。あと、他の使用人たちにもそうお伝えしてもらえませんか?」

「はっ! かしこまりました」

 ゼルナーさんはレオンハルト様の言葉を受けて、食堂から出て扉を閉める。

 しかし屋敷で働いている他の人たちにもこの場に近づかないように念を押すとは……、一体なにを話すつもりなのだろうか……。

「さて、もうそろそろいいでしょう。ここから先は二人だけの話ということで僕も口外しないと約束しますのでそれを信じて話してください」

 食堂で二人きりになった私とレオンハルト様。

 彼はここだけの話と念押しをする。

 これはどういう意図があっての発言なのだろうか。

 人払いをすれば言いにくい話もできる。それを見越しているのはわかるけど、なにか他にも意味が……。

 レオンハルト様の視線が私を捉える。その眼鏡の奥の眼光からすべてが見透かされているようで、私はつい背筋をピンと伸ばしてしまった。

「聖女をこの国に人質として送り込んだのはフェネキス国王の陰謀によるものですね?」

「えっ!?」

 瞬時に見破られた故郷の国王による企み。

 両国間の安寧のために人質を送るというのは不自然というほどではないので私は驚いた。

 もっともスパイを送られている時点でアルゲニアからすると我が国への信頼はないのかもしれないが……。

「フェネキス国王のスパイを見つけたのは僕なんですよ。と、いうのも錬金術による最新の魔道具の資料を盗みにこの屋敷に侵入しましてね」

「スパイがここに……」

「ええ、五名ほど。よく訓練された手練(てだれ)でしたのでスパイであることを自白させるのに苦労しました。どうやら国王は我がアルゲニアの侵略を諦めていないようですね」
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