ラスボス聖女に転生してしまいました~婚約破棄され破滅する運命なので、生き延びるため隣国で錬金術を極めます~
 なるほど。先の戦争で戦況がこれでもかというほど左右したのが錬金公爵レオンハルト・オーレンハイムによる魔道具の数々だった。

 国王陛下はその反省を活かして秘密兵器の情報を探ろうとしたのだろう。

 そんなことをしていたのがバレれば間違いなくもう一度戦争が始まりそうになるのは仕方がないことだ。

(でも、だからといって私を人質として送ったことが不自然なことになるのかしら)

 とはいえ、それだけの大事をしでかしたからこそ聖女を人質として送ったというのは一応筋が通っているように思える。

 フェネキス側に不信感があるのはわかるが、レオンハルト様はそのあたりをどうお考えなのだろうか。

「その後、国王は聖女を謝罪の証として人質にしようと提案しました。その行為自体は理解できたんです。信用には足りませんが、こちらとしても手出ししにくい状況にはなりました」

「はい……」

「ですが人選がおかしい。三人いる聖女のうち、あなたをこちらに送るのは明らかに不自然です」

 レオンハルト様ははっきりと私がこの国に来たこと自体に違和感を覚えると口にする。

 気にしたのはそこなんだ……。どうしてだろう?

 アルビナス殿下やシェリアでなくて、私というのはそんなに変なことだろうか。

「先ほど話に出ましたあなたの妹シェリア・エルマイヤーさんは聖女になってから日が浅いと聞きました。通常ならば聖女として一番能力的に未熟なシェリアさんを人質に選びませんか?」

「そ、そうですかね?」

「それにあなたは第二王子エルドラド殿下の婚約者です。いわば王族も同然の立場なのに、わざわざシェリアさんを選ばずしてあなたを人質として選択するのは……いささか不自然と言わざるを得ません」

 ぐぅの音も出ないほどの正論。

 こうして聞くと確かにシェリアを人質にせずして私が人質となるのはおかしいと思われても致し方ない。

 力のある聖女を選んだと言い訳しようにも、私の力はアルビナス殿下に及ばない。

 まぁ、フェネキス王国もなにがあってもアルビナス殿下だけは手放さないと思うが、だからこそ私という選択は中途半端なのだ。

「失礼を承知で質問します。リルアさん、あなたの身になにか不都合なことが起きてしまった。それゆえにあなたの聖女としての価値が欠落してしまったのではありませんか?」

 ほぼ正解を言い当てられて私の鼓動が速くなる。
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