円満夫婦ではなかったので

「それでうちから名希沢希咲の会社に連絡を?」

「ああ。彼女が所属していた美倉空間デザインにとってソラオカ家具店は大口取引先だ。すぐに名木沢希咲を処分した」

「そうなんだ。でもいきなり解雇だなんて厳しいのね」

園香の言葉に彬は「いや……」と僅かに首を横に振る。

「名木沢希咲への処分はソラオカ家具店への出入りと、業務での関わりを禁止するものだった」

「そうなの? だったらなぜ解雇に?」

「処分を不服とした名木沢希咲が、妻に嫌がらせをしたんだ。代理人が入ったのはそれがきっかけだ」

「嫌がらせってどうして? 元はと言えば自分が悪いのに」

担当替えくらい受け入れるべきというのが園香の感覚だから、かなり驚いた。

「理由は分からないが、嫌がらせに参った妻は実家に帰り、代理人を通して慰謝料請求をした。美倉空間は名木沢希咲を解雇した」

「それは解雇にもなるよね」

園香は納得して頷いた。経営者としてはそんなトラブルメーカーの社員を雇っておくのは怖いだろう。
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