円満夫婦ではなかったので
「お帰りなさい」
園香が声をかけると、瑞記はぎこちなく頷く。
「ああ、もう食べてるんだ。いくらなんでも早くないか?」
瑞記はテーブルの上のシチューを嫌そうに見る。
「そうかな? 瑞記が帰ってくると知ってたら待っていたんだけど」
「なんだよその言い方。俺が悪いみたいじゃないか」
「そんなつもりはないんだけど、悪く受け取らないで」
早くも感じの悪い会話となっている。
(きっと私と瑞記は合わないんだわ……一年前の私はどうして彼と結婚を決めたんだろう)
夫婦の考え方は大分違う。結婚前の付き合い期間では表面に出辛かったにしても、違和感などがなかったのだろうか。
「クリームシチューなんだけど、よかったら食べない?」
気を取り直して訪ねると、瑞記はぶすっとした顔のまま園香に紙袋を差し出した。
「これは?」
「夕飯にふたりで食べようと買って来たんだよ。まさかもう食事中とは思わないからね」
(瑞記が私と食事をしようと?)
園香は驚きながら紙袋を受け取り、中身を見た。