円満夫婦ではなかったので
「……ジンギスカンセット?」
テイクアウト用のセットで、ラム肉や野菜などが綺麗にパッケージされている。
「そう。この店、以前食べて美味しかったから」
「あ……そうなんだ」
(私とじゃないよね。名希沢さんと食べに行ったのかな)
園香はラム肉が苦手だから、外食の時にジンギスカンを選ばない。
「どうしたんだよ? 黙りこくって」
怪訝そうな瑞記の声にはっとした園香は、無理やりつくり笑いを浮かべた。
「なんでもない。これありがとう。今焼いて来るね」
園香は紙袋を少し持ち上げながら言う。
「いや、ここにホットプレートを置いて焼こう。俺がやるよ」
「……分かった」
園香は食べかけのシチューとサラダなどを手早く片付けて、ダイニングテーブルにホットプレートを用意する。
部屋で肉を焼くのは臭いが気になるが仕方がない。
肉と野菜を皿に移したりと準備をしていると、酷い疲れを感じた。
早めに夕食をとってのんびりしようと思っていたのに、予定がくるったからだろうか。
(シチューつくらなければよかったな……あ、お米を用意した方がいいのかな)
瑞記が肉だけで食べるのかご飯が必要なのか分からない。
気を遣いながらテーブルのセッティングを終えたとき。スーツから部屋着に着替えた瑞記がやって来て、肉と野菜を焼きはじめた。