円満夫婦ではなかったので
「瑞記はもっと淡泊かと思ってた。人は見かけによらないよね」
しばらくお互い触れ合いじゃれあったあと、、希咲がしみじみした様子で言った。
「希咲が魅力的だからだよ」
「ええ……でも奥さんにだって同じようにしているんでしょ?」
「まさか。園香とはあり得ないよ」
もう半年以上は触れ合っていないし、思い出しただけで、盛り上がっていた気分が萎んでいくくらいだ。
「希咲……僕は妻と別れようと思う」
「えっ?」
瑞記の言葉に、希咲は衝撃を受けたように目を見開く。
「ど、どうして突然?」
彼女が驚くのも無理はない。瑞記は今まで離婚について一度も口にしたことが無かったのだから。
「希咲とこういう関係になった以上、園香と結婚生活を続けるのは無理だと思うんだ」
「でも奥さんが可哀そうじゃないの?」
希咲はかなり動揺していた。園香に対する罪悪感が強いのかもしれない。
「大丈夫だよ。離婚は園香の方から言い出したんだ」
「奥さんから?」
希咲は目を伏せて何か考え込んでいる。瑞記は宥めようと彼女の肩を抱いた。
「少し喧嘩しちゃったんだ。それで園香の方から離婚を言い出した。そのときの僕は離婚に踏み切れなかったけど、今なら迷わない」
「瑞記が離婚しても、私は離婚出来ないんだよ?」
「それは……分かってるよ」
そう答えながらも心がもやもやした不快感で満たされる。彼女の夫に嫉妬しながらも何も出来ない立場の自分が辛い。