円満夫婦ではなかったので

(今の私は瑞記と離婚したいんだから、祝福してくれた人には申し訳ないけど仕方ないわ)

自分なりに一生懸命結婚生活を続けようとした結果、駄目だったのだから。

時計に目を遣ると七時時四十五分を指していた。園香は座っていたダイニングテーブルの椅子から立ち上がり、バッグを手に取る。

勤務時間は九時から十五時の契約だが、いずれフルタイムで働けたらと思っている。その為には早く仕事を覚えて認めて貰わなくては。

「行ってきます」

園香は期待と緊張を胸に玄関のドアを開いた。



園香が契約社員として勤務するのは、ソラオカ家具店が扱う商品を展示する【ソラオカ家具店横浜ショールーム】だ。

横浜の元町商店街にあり、JR石川町の駅から徒歩で十分程で着く。

実家も学生時代を過ごしたのも東京の園香にとって、横浜はたまに遊びに来るあまり馴染みのない街だが、今のマンションも勤め先の周辺の雰囲気もかなり気に入っている。

地図を見ながら迷わず到着したショールームは、白い外壁にガラス張りの開放感の溢れる建物だった。事前に写真で確認していた印象よりも、こぢんまりしているがその分明るい雰囲気だ。

ショールームは十時から十九時までなので正面入り口は閉じていたが、スタッフと思われる園香より少し年上に見える女性が自動扉の前に立っていた。

彼女は園香に気付くと笑顔で近づいて来る。彼女の胸元にスタッフであることを表すネームプレートが見えた。

「失礼ですが富貴川さんでいらっしゃいますか?」
「はい。本日からこちらのショールームに勤務させていただきます富貴川園香と申します」

園香が名乗ると女性は明るい笑顔になった。

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