ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「ええと、お会計、おいくらでしたか? 現金で申し訳ないんですけど」
さっとカードで支払いを済まされてしまった手前、恥をかかせないほうがいいなとその場では控えたものの、もちろんちゃんとしておくべきよね。
今日は前回と違って、ビッチのフリをしてるわけじゃないし。
何しろ、ミシュラン星付き。簡単に奢ってもらえるようなカワイイお値段じゃないはず。
そう思ってお財布を取り出そうとした私を視線で制し、彼は肩をすくめる。
「引っ越し祝いのつもりだったんだ。気にしなくていい」
「引っ越しって……でも、一時的な避難ですよね? そんな、お祝いするようなことでも……」
そうだ。ここらへんで、本気で断っておこうか。
このままだと本当にそのアパートに住むことになってしまいそう……と考えながら窓の外を見て、俄かに疑問が浮かぶ。
そういえば、今この車はどこへ向かってるんだろう?
都内の中心部にも近いような気がするけど、アパートの場所はまだ聞かされていない。
外の景色をきょろきょろ窺っていると言いたいことが伝わったのか、なぜか彼がニヤリと片頬を吊り上げた。んん? なんだか今、黒い何かが見えたような……
「あぁほら、もう見えてきた。そろそろ着くぞ」
「え、どこですか?」
慌てて追った、その視線の先。
これぞまさしく、な堂々たるタワーマンションが、夜空をバックにそびえていた。
「うわぁ、すごい立派ですねー……ん?」
タワマン? え、それはおかしくない?
まさか、こんな高級そうなマンションが月5万なはずはない。
一体おいくらの物件を探してきたのよ、この御曹司は!
相場ってものを知らないのね? 平社員に払えるわけないじゃない。
はっ。それともまさか、こんな形で私の暴挙に対する嫌がらせを……??