ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「ねぇ知ってる? あの中ねぇ、スーパーやジムはもちろん、映画館も入ってるし、インドアゴルフとかスカッシュとかボーリングまでできて、住人ならタダで使えるんですって」

うん知ってる、とも言えず、「すごいね」と生返事を返す私。とにかく、ここはこのまま帰らない方がいいだろう。駅まで戻って時間をつぶして……

「でも彰さんは反対してるの。高すぎるって。このあたしと結婚できるのよ? お金の問題なんて、些細なことじゃない? そんなこと言うなら、結婚してあげないわよって脅かしちゃった」

不機嫌そうに言ってから、人工的な茶色い瞳が私を見上げた。

「……するけどね、結婚。残念でしたー」

いやいや、まさか。残念なもんですか。
彼に掴まれた腕の感触を思い出して、ブルっと震える。

キララこそ、あんなヤツでいいのかな。
私への対抗心で、結婚決めてないでしょうね?

何を言っても“ひがんでるだけ”って、聞く耳持たないだろうから、黙っておくけど。

「まぁ、お父さんにもお金出してもらうし、全然問題ないよねー」

いやいや、いろいろ問題しかない気がする。ダメ押しみたいにあっけらかんとした口調で言われ、我が妹ながら呆れてしまう。

この子は、お金が天然温泉のように湧いてくるものだと思ってるんだろうか。
もう長い間、従業員のみんなは雀の涙って額のボーナスで我慢してるっていうのに……。

マイバックの持ち手をきつく握り、ふつふつとお腹の底に溜まった怒りをなんとか散らそうとする私――ところが、次の一言ですべてが吹っ飛んだ。

「ねぇ、そういえばお姉ちゃんて、一星辞めてからリーズニッポンで働いてるんだよね?」

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