ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
嫌だと思った。
彼とキララを会わせたくないって……
バカだな、私たちは恋人でもなんでもないのに。
こっちはただの居候で、同居人で、いずれ出ていく身で。ちょっと距離が縮まったからって、こんな風に嫉妬する権利なんて、あるはずないのに。
その後、遠回りして時間を潰し、もういいかなとようやく帰宅。
とぼとぼと重たい足を引きずるようにしてたどり着いた玄関ドアを開けると、ちょうど貴志さんが廊下の途中、自分の部屋から顔を出したところだった。
「お帰り。結構遅かったな」
柔らかな響き、寛いだ笑顔……自分へと向けられた特別めいたそれらに、ぎゅ、と心臓が鷲掴みされたみたいに息が苦しくなった。
「た、だいま、です」
「あ、また青葉屋に寄って来ただろう。金なんて気にするなって言ってるのに」
近づいて来た彼はマイバックを奪いざま、むにっと私の頬をつまむ。
そしてくるりと踵を返していく。
その逞しい背中へ駆け寄って抱きつきたい衝動に襲われて、きつく唇を噛んだ。
どうして彼は、何もしないんだろう?
私のカラダが欲しかったんじゃないの?
いっそのこと、何も考えられないくらいめちゃくちゃに抱いてくれたらいいのに、とすら考えている自分に気づいて、情けなくて泣きたくなった。
この場所を、手放したくない。
誰にも譲りたくない。