ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
いつの間に、私はそんな欲張りなことを考えるようになっていたんだろう。
あの最初の一夜で、終わりにするはずだったのに。
コントロールできない感情を持て余して、私はその場からなかなか動けない。
……すると。
縋るように見つめていたその背中がピタリと止まった。
彼は肩越しに振り返り、なぜかこっちを凝視している。
「な、なんですか?」
物言いたげな空気を感じて、ぎこちなく問う。
それに答えることなくバックを床へ置いた貴志さんは、スタスタと戻ってきて……
「っきゃ!」
いきなり、私を腕の中へ攫うように強く、抱きしめた。
世界中の時が止まったみたいに、すべてが真っ白になった。
「……たかし、さんっ」
「大人しくしてろ。じゃないとこのままキスするぞ?」
「なっ!」
強引な言葉とは裏腹に、ぽんぽんと子どもをあやすみたいに私の頭を撫でる手は限りなく優しい。
「ど、どうしたんですか?」
「んー、ただのハグ?」
「た、ただのってなんで……」
温かく広い肩に顔が押し付けられて、大きな腕の中に守るように囲いこまれて。
突然降ってわいた夢のような展開に、私の脆弱な心臓はあっという間に燃え尽きてしまいそうだ。
「“広告の品が売り切れてて買えなかった、ちくしょう青葉屋め”、みたいなカオしてるから」
「は……?」
あ、青葉屋?