ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「ふふっ、何ですかそれ――」

緩んだ口元で言いかけて、はたと気づく。
もしかして……わかりにくい表現だけど、私の様子を心配してくれてる……?

「……何か、あったのか?」

あぁやっぱりそうだ。気づかれてる。

思うそばから震えてしまう唇を、きつく引き結ぶ。

こんなこと、ダメなのに。
彼との距離は、絶対近くなっちゃダメなのに。
その手があんまり優しくて、愛おしくて……どうしたらいいのかわからない。

どうしてこんなに、この人を好きになってしまったんだろう。
前よりずっと、好きになってしまったんだろう。

膨れ上がるやるせない気持ちを押し殺して、必死に呼吸を整えて。

「……なにも、ない、ですよ?」

なんとか、いつものトーンで言う。

お願い信じて。
これ以上、踏み込まないで。

胸の奥の叫びが届いたのかどうかわからないが、「そっか」と彼はため息交じりにつぶやいた。

「…………」

それっきり沈黙が続いて――不快にさせてしまったかと心配になりかけた頃。
私のつむじにちゅ、と軽いキスが落ちた。

「……ルイス・ブラウン監督の新作、ネトフリで配信始まってた。今夜、一緒に見ないか。好きだって言ってただろ」

< 135 / 345 >

この作品をシェア

pagetop