ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「ふふっ、何ですかそれ――」
緩んだ口元で言いかけて、はたと気づく。
もしかして……わかりにくい表現だけど、私の様子を心配してくれてる……?
「……何か、あったのか?」
あぁやっぱりそうだ。気づかれてる。
思うそばから震えてしまう唇を、きつく引き結ぶ。
こんなこと、ダメなのに。
彼との距離は、絶対近くなっちゃダメなのに。
その手があんまり優しくて、愛おしくて……どうしたらいいのかわからない。
どうしてこんなに、この人を好きになってしまったんだろう。
前よりずっと、好きになってしまったんだろう。
膨れ上がるやるせない気持ちを押し殺して、必死に呼吸を整えて。
「……なにも、ない、ですよ?」
なんとか、いつものトーンで言う。
お願い信じて。
これ以上、踏み込まないで。
胸の奥の叫びが届いたのかどうかわからないが、「そっか」と彼はため息交じりにつぶやいた。
「…………」
それっきり沈黙が続いて――不快にさせてしまったかと心配になりかけた頃。
私のつむじにちゅ、と軽いキスが落ちた。
「……ルイス・ブラウン監督の新作、ネトフリで配信始まってた。今夜、一緒に見ないか。好きだって言ってただろ」