ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
私の父親――山内耀治は、一星百貨店というデパートの社長だ。
創業は古く明治時代まで遡るという歴史だけはある老舗の店で、業界の一番星を狙ったというネーミング通り流行をいち早く取り入れ、店舗を増やして海外にも進出。香港とシンガポール、パリに支店がある。
ただし景気がよかったのは昔の話で、平成、令和と時代が進むにつれ、ネット通販や量販店に押され経営は悪化の一途。大学卒業後、一星の経理部で3年間働いていたから、内部事情もよくわかっている。
早く手を打たなければならないのに、あの父が考えることといえば、一星のブランド価値を守ることばかり。
あげく、今時娘の政略結婚で難局をどうにかしようと考えているらしいから呆れてしまう……と、とりとめもなく考えていたところで閃いた。
――本日夜、終業後にご実家の方へ寄るようにと。
もしかして、お父さんの話というのはそれだろうか。
いよいよ、あのお見合い話を本気でまとめてきた?
空調の効いた車内のくせに、手の平はじっとりと湿っていた。
◇◇◇◇
東京・大手町。
東京駅にほど近いビジネス街に、ひときわ目立つ近代的な高層建築。
そこが、私の現在の職場――リーズニッポンだ。
シンガポールに本社を置くリーズコーポレーションの日本法人で、日本オリジナルといわれる総合商社では珍しい、外資系企業である。
私はそこで、秘書室アシスタントとして働いている。
といっても、正社員ではない。