ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

一緒に秘書室の入口付近まで戻って来たところで、「あ、そうだ」、と隣を歩く長い足が止まった。

「今夜の会食キャンセルになったから家で食えそうなんだけど、作ってもらっていいか?」

「あ、はい。いいですよ」
自然と弾んでしまった声音を咳払いで誤魔化して、()を取り繕う。

「リクエストはありますか?」

「んーカレー?」
「……またですか?」

ついぽろっと本音がこぼれてしまった。

だってリクエストを聞くと、80%くらいの確率でカレーなんだもの。
本当に好きなのか、ひょっとして私の腕を信用してないのか……?

「なんだよ、悪いか?」
「悪くないですけど」

微妙な顔をする私に、その整った眉がむむ、っと寄った。
「わかってる、子どもみたいだって言うんだろ」
「何も言ってないじゃないですか」
「顔に書いてある」
「書いてないです!」

「あぁくそっ」と照れ笑いと共に悪態をついた彼が大きな手を伸ばしてくる。
髪をぐしゃっとかき混ぜられて――

「わわっ、や、止めてください!」
あぁまただ。
きゅんと高鳴る鼓動はどうしようもない。

「くく、じゃあ夜な」

対する彼は、何事もなかったかのように笑顔でヒラヒラ手を振り離れて行き――。

対照的な様子はまるで将来を予言しているよう。
私は小さくやるせない吐息を漏らし、淡々と乱れた髪を手櫛で直した。

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