ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
そして彼の背中から視線を剥がし、自席へと歩き出し……すぐに何かが変だ、と気づいた。
その先のフロアに居た秘書課のメンバーたちが、揃って口をぽかんと開け、こっちを見つめていたからだ。
え、今のやりとり、見られた?
夕食云々の内容は、十分離れてるし聞こえなかったと思うけど……。
訳が分からないまま足早に自席を目指し、隣のノリちゃんへ「何かあった?」と、こそっと声をかける。そうしたら、金縛りが解けたみたいにガバッと立ち上がった彼女に両肩を掴まれた。
「ちょ、ちょっと織江! なんなの、なんなのあのスマイルはっ!」
「す、スマイル?」
「副社長よ! 彼があんな風に笑うとこ、初めて見たわよ私っ!」
「そうだよ! クールビューティってあだ名がついてるくらいだもんな。いや、なんかおれ、感動したわーあの人あんなカオもできるんだな」
「何話してたの? めっちゃ優しく笑ってたわよ!?」
「こっちまでドキドキしちゃったじゃない!」
ノリちゃんだけでなく、岡田さんや他のメンバーも口々に興奮気味にしゃべりだす。
いや、盛り上がってるところ申し訳ないけど、こっちは単なるセフレ候補で。面白がって遊ばれてる、ってだけですが……
困惑する私の肩に腕を回し、ぐいっと引き寄せたのはノリちゃん。
他の人に聞こえないように小声で囁いた。
「もしかして、最初から同居じゃなくて同棲、ってことだったわけ? なんで教えてくれなかったのよっ」
「なっ!」