ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「ありがとうございましたー!」

青葉屋(スーパー)のお兄さんの元気な声に送られて、店を出る。
自動ドアが開くとたちまち、モワッとした外気に身体を包み込まれた。

思わず顔をしかめてしまいながら、マイバックをしっかり抱え直し歩き出す。

「ニンジン、ジャガイモ、ナスとトマトと……よしよし」

マイバックをチラ見して、買い忘れがないか一つ一つチェック。
ちょっと買いすぎちゃったかな? ハリキリすぎたかも。

考えている間にも汗が全身に滲んで、キャミソールが肌に張り付いてくる。

幸い雨は降ってなくてまだ明るいとはいえ、頭上の雲は黒くて分厚い。気温も高くて、ジメジメベタベタ、梅雨時特有のまとわりつくような空気が不快だ。

やっぱりネットで注文して、セレブスーパーから配達してもらえばよかっただろうか。いやいや、貴志さんのカードで買わせてもらうんだもの、無駄遣いは厳禁……。なんかこれ新婚さんみたい、って、あぁバカバカごめんなさい、妄想激しすぎました。

自分でツッコみつつ先を急いでいると、柔らかな色彩が視界を掠め、私は歩調を緩めた。

紫陽花だ。

6月も中旬を越すとあちこちで満開を迎え、競演を喜ぶように咲き誇ってそれはそれは華やかな景色だ。知らず知らずのうちに目を細め、帰宅途中であることも忘れて感嘆の吐息をついてしまうほど。

こんな鬱々とした天気なのに、逆にそれが花の鮮やかさを引き立てているようで気分が上向く。

やっぱり紫陽花は綺麗だなぁ……ね、お母さん。


「……?」

刹那。
微かに、身体が強張った。

コクリ、と我知らず喉が鳴る。


え、気のせい?

なんだか、誰かに見られているような。
視線を感じるような……?

< 146 / 345 >

この作品をシェア

pagetop