ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
「織江? サラダに使うなら、レタスはそこまで千切りにしなくてもいいと思うが……」
躊躇いがちな声に「へ?」と間抜けな声が出てしまった。
そしてようやく、スパイシーな香りが漂うキッチンで、レタスをこれでもかと細く刻んでいる自分に気づいてギョッとした。
「きゃ、キャベツと間違えました。すみませんっ」
「いや、別に食えれば文句はないけど――」
もの言いたげな視線に、気まずい沈黙が漂う。
こんなことなら夕食の準備、手伝うと言ってくれた時に断ればよかった。
何か言い訳を、と焦るほど、口は言うことを聞いてくれなくて――
RRRR……
と、そこで天の助け。
リビングのどこかで、貴志さんのスマホが鳴りだした。
私が笑顔を作ってみせると、まだ後ろ髪引かれるように少し訝し気にしながらも彼はスマホを取りに行く。
「……Hello?」
海外からだったらしい。仕事の電話だろうか。
時差の関係か、彼のスマホは夜だろうとよく着信がある。
ネイティブ並みの滑らかな英語で話しながら自室へと向かって行く背中を見送り、私はホッと肩から力を抜いた。