ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「悪い、途中で抜けて。そろそろカレーできた?」

ドアの開閉音と貴志さんの声が響いたのは同時だった。

物思いから覚めた私はビクッと後ずさり、何気なく手を置いた場所が悪かった。
鍋を移したばかりのIH、まだ余熱があることを示す赤いランプが灯っていたのに……

「あっつ……!」

弾かれたようにその手を胸へ抱き込む私へ、貴志さんが「どうした!?」って駆け寄ってくる。

「だだ大丈夫ですっ。ちょっと指先が触れただけなので」
「火傷したのか? 見せてみろ。ほら、早くこっちっ」

掴まれた手はシンクの水栓の下へ強引に持っていかれ、流水に晒された。

「だだ大丈夫ですっ……ほんとにっ」

自分とは違う、大きくて骨ばった男の人の手。大好きな人の手に、包み込むように握られて……。この状況で、何も感じない女子はいないだろう。

やだ、私……手よりも顔が熱い……

「……なぁ織江、今日会議の後で何かあった? ちょっと、いつもと違うっていうか……まぁさっきのは、オレが突然声をかけたのがいけないんだが」

「え、と……あはは、いつもこんな感じですよ? 結構ドンくさいんです」

「そういうことじゃない。なんだか顔も赤いような気がするし」

そそそれは、あなたがこんな近い距離にいるせいです!

答えようと開けた口を、慌てて閉じた。
彼がぐいっとさらに顔を近づけてきたからだ。

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