ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「たた貴志、さっ……」

軽くパニックに陥っている間にコツン、と額が触れ合う。
「んー、熱はなさそうか」

離れたいのに、手を掴まれてるせいで動けない。
硬直した身体をただただすくめていると、クスっと小さな笑い声。

「何照れてんだよ。もっとすごいことした仲なのに」
「す、すごい、とか言わないでくださいっ」

「じゃあ、セックスした仲、って言えばいい?」
「バっ! なんてこと言うんですかっっ!」

放してもらおうとジタバタする私の手をがっしり掴んだまま、彼は口元を楽し気に緩ませる。

「よかった、指の方、大丈夫そうだな」

そしてそれから、手近なタオルを取って水気を拭きとってくれた。
1本1本、指についた水滴を丁寧に――

「貴志、さん……?」

なかなか離れて行かない手に気づいて視線を上げると、彼のどこか困ったような、悩ましげな顔に気づいてドキリとした。

「参ったな……なんだろうな、この気持ちは」
「この、気持ち……?」

「……いや、なんでもない」

そう言ってかぶりを振る彼と、視線が絡んだ。

「…………」

長いまつげ、完璧なカーブを描く二重瞼まで、はっきりと見えるこんな距離で。
鼓動が聞こえてしまいそうなこんな距離で。

2人きりで見つめ合ってるとか、まるでマンガやドラマのワンシーンみたいで……心臓が爆発してしまいそう。

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