ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
彼自身はマスコミ嫌いらしく、取材の類はビジネス誌も含めてすべて断っているから、多くの一般人は彼がどういう人なのか、実は外見も性格もよくは知らないはずだ。
ただ、アイドルとか女優とか、見た目も派手な美人をお相手に好むようで、そういう人たちとセットで“イケメン副社長”として報道される(一応目の部分は隠されている)せいで、実際以上にだらしない遊び人のイメージばかりが独り歩きしてる、という感じはする。
「外見がいいのは認める。これで仕事ができないボンボンだったら、間違いなくとっくにクーデター起こってるでしょうね。ただでさえ、“雇われ副社長”とか“サラリーマン副社長”とか、昔は陰口たたかれてたし」
もちろんクーデターは起こってない。
だって、どんな女性スキャンダルが報じられても、社内の人間はもうわかっているから。彼がどれほど有能かつ優秀な人か、どれほど会社のために奮闘してるかってことを。
「ま、彼のことはどうでもいいわ。んで? どうだったのよ? 金曜の夜はっ!」
マスコミ集団の脇を通り過ぎ、一緒に吹き抜けのエントランスホールへ入ったところで、期待に満ちた目に見つめられる。
一瞬ズキリと罪悪感に襲われた。
もちろん顔には出さずに、そのまま微笑んでおく。
「うん、ほんとに助かったよ、ありがとう! おば様にもよろしく言っておいてね。久しぶりにいろいろお話もできて、楽しかったですって。ゴールデンウィークあたり、またお礼に伺うから」
実はあの夜の情事をお膳立てしてくれたのが、ノリちゃんと彼女のお母様なのだ。
秘書室のおしゃれ番長であるノリちゃんが服を選んでくれ、美容家として活躍するお母様が直々にヘアメイクしてくれて。2人がかりで「別人のように」というオーダーを完璧に叶えてくれた。
私だけだったら、ただの露出狂のイタイ女になっていたと思う。
「おば様へのお礼は何がいいかな? スイーツ? お肉とかの方がいい?」
「えー気にしなくていいってそんなの。織江のことは昔からお気に入りだし、頼ってもらって大喜びしてたんだから」