ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
誰だ? まさか、SasakiのS? 元カレとまだ続いてるとか? いや、あれほど嫌がっていたんだ、それはないだろう。それなら、ストーカーの方がまだ信ぴょう性がある。だがストーカーと連絡なんか取るか? 一方的なイタ電?
そもそもアルファベット一文字で登録しているところに、何か秘密めいた匂いを感じてしまうのはオレだけだろうか。少なくとも友達じゃないよな。
ということは誰か、他にいるのか。隠さなきゃいけない関係の男が。
オレに対して好意を持っていることは伝わってくるが、最後の最後でどこか遠慮がちに壁を作ろうとするとする彼女の態度は、そいつのせいなのか。
もちろん、恋愛とは関係ないかもしれない。Sが男だと決まったわけでもない。
ただ、彼女が何か秘密を抱えているのは間違いない。
あれこれと考える胸の奥で渦巻いていたのは、強烈な嫉妬だ。
何か悩んでいるのなら、オレに相談してくれればいいのに。他に頼る男がいるかもしれないことが、たまらなく嫌だった。
彼女の話をもっと聞きたい。
彼女のことをもっと知りたい。
彼女が一番に頼ってくれる男でありたい。
――なんだろうな、この気持ちは。
そう嘯きつつも、その感情につけるべき名前に、オレはすでにほぼ気づいていたのだが。
それより今は、彼女から事情を聞き出すことの方が先だ。
しかし、無理に聞き出そうとすれば彼女はオレの前から消えてしまいそうな気がする。彼女にはそんな、自分さえ我慢すればいいというようなどこか危うげなところがあったから。つまり、コソコソスパイの真似事をして探るのも、同様に避けたい選択だ。