ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
悩んだ末、オレは……
――なぁ、今度の日曜の予定は?
気分転換に、と言い訳を添えてデートに誘うことにした。
ただの同居人以上に意識してもらうと同時に、話をしやすい雰囲気にもっていけたらと思って。
もちろん、彼女を思い切り甘やかしてやりたいという下心も含みつつ。
断わられるかと思ったが、案に相違して返事はOK。天にも昇る気持ちで、オレはさっそくプランを練り始めた。
紫陽花好きだってことはたぶん間違いないから、北鎌倉へドライブなんてどうだろう。あのあたりは紫陽花の名所がたくさんあるし、祖父さんの庭も見せてやりたい。あそこで食事をして、なんなら一泊するか。いつでも泊まれるように清掃などの管理はされてるはず……いやいや、さすがにそれは急ぎすぎか?
これまでなら、デートコースを決めるのは大抵相手で――ブランドショップを梯子してショッピング、それからディナークルーズとか――オレは財布だけ出すってパターンが多かった。
こんな風に、行先やらなにやらわざわざ自分で調べて手配するなんて、らしくない行動だということはわかっていたが、必死になる自分はなぜか嫌じゃなかった。
そして当日。
人が多いことを理由に手を繋ぐことにも成功し――思春期のガキみたいに心臓は乱れ打っていたが――オレたちの初デートは終始順調だった。
織江の紫陽花好きはオレの想像以上だったようで、目を輝かせて喜んでくれたし、オレはそんな彼女から目が離せず、紫陽花よりも彼女に見惚れていた気がする。
周囲を歩く男どもが――自分の恋人が隣にいるというのに――織江をチラ見してきて苛立つ場面もあったものの、それだけ彼女が魅力的ということだと自分を無理やり納得させ、極力手を放さずオレのものだとアピールしておいた。
楽しい時間はあっという間に過ぎていく。
クライマックスは、祖父さんの紫陽花園。
写真もたっぷり撮って、食事の席では仕事のことからプライベートなことまで、たくさんの話もした。彼女は、紫陽花が亡くなった母親との思い出の花だということも教えてくれた。
ただ――一番知りたかった、Sの手掛かりになるような話は聞けずじまい。
若干の不完全燃焼感を抑えて彼女に渡したのは、紫陽花のペンダントだった。