ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「あるわよ。だって織江だってわかってるでしょ。副社長、最近すごく変わったじゃない」

「え?」
どういうことかと首を傾げれば、プルコギに箸を伸ばしたノリちゃんが「雰囲気よ」と強調してくる。

「人当たりがいいっていうか、表情が柔らかくなったよ。前はさ、誰かも言ってたけどクールビューティっていうか、孤高の貴公子感が出てたじゃない。しゃべれないわけじゃないけど、ちょっと緊張しちゃう、みたいな」

言いたいことはわかる。
近づき難いっていうか、私たちとは違う別世界の人、って空気が漂ってた。同じ会社の社員、っていうよりアイドルとか俳優とか、遠くから見るべき人、みたいな。一緒に暮らし始めて、実はよく笑う人だったんだってびっくりしたくらい。

「今はさ、随分話しかけやすくなったじゃん。言葉も、事務的じゃなくて血が通ってるっていうかさ。それって、織江の影響でしょう?」

いやいやまさか! と激しく否定しても、彼女は諦めない。

「んもう、素直じゃないなぁ。あ、変わったと言えばさ、織江も変わったよね」
「へ……わ、私っ?」
「そうそう、なーんか女っぽくなった」
「ノリちゃん、視線がヤラシイんですけど……」

ジト目で睨むと、ケラケラっと明るい笑い声が弾ける。

「でもさ、絶対憎からず想われてるんだから、こっちから告白してさっさと正式に付き合っちゃいなよ。ほら、言ってたじゃない。そろそろお見合いしなきゃいけなさそうだって。織江のお父さんがどんな相手用意してくるつもりか知らないけど、副社長に適うほどの相手なんていないよ。織江だって、顔も知らない相手と結婚するより、副社長の方がずっといいでしょ?」

お見合い、か……。

「それは……うん、まぁ……」

言葉を濁した私は運ばれてきた海鮮チヂミを頬張り、「ん! おいしいよこれ!」とさりげなく、というより無理やり話題を逸らしたのだった。

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