ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

はぁああっと息を吐き出した私は、すりガラスの窓に流れる雨粒の跡を目で追った。

梅雨はまだ明けず、毎日のようにすっきりしないジメジメした天気が続いている。まるで私と貴志さんの関係のように。

「もう、織江ったらそんなため息つかないでよ。まさか諦めるつもりじゃないでしょうね? 好きなんでしょ? 副社長のこと」

「……そそれは……」
ド直球な質問に虚を突かれ、壁に貼られた韓流ドラマのポスターなんかへ視線を泳がせてしまう私。でも。

「あんな近くにいて、惹かれないわけないもんね」

さっきまでの冗談っぽい声音から一転優しく言われて、ゆるゆると肩が落ちていく。

「大丈夫、私の見るところ、副社長は相当本気よ。今日だって独占欲丸出しだったじゃないの」
「ど、独占欲?」

なんのことかと聞き返せば、今日の午後、外出から戻って来た貴志さんが休憩室から私を連れ出した時の事を言っているらしい。

「織江が他の男としゃべってるの、我慢ならなかったんでしょ。みんなわかってたわよ。あそこガラス張りで、外から丸見えだから」

「えぇええ……ただ仕事を頼みたかっただけだよ?」

――山内さん、悪いけど今から急ぎで頼みたい仕事がある、できるか?

確かにあの時私は営業さんと話をしていたけど……。

「口実、という言葉を知らんのかね、織江クン?」

こ、口実?
そりゃ、まぁ急ぎって言ってたわりには、頼まれたのはまだ期日まで余裕がある翻訳で。少し変だなとは思ったけど……でもまさか、ね?

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