ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
最初の時に、もっときっぱり断ればよかった。中途半端にズルズルと傍にいたから、離れることもできないくらい彼のことを好きになってしまって……
――お久しぶりです。突然ご連絡してすみません。
――私たち、もう一度やり直せませんか?
“S”と交わしたやりとりを思い出す。
もう、後戻りなんてできない。
私は、引き金を引いてしまったから。
――織江は、自分の足で立てる女性にならなくちゃダメよ。
――そして、思うままに生きなさい。
わかってる、お母さん。私は自分が正しいと思うことをした。だから後悔はしてない。うん、後悔してるわけじゃないんだけど……
どれだけそうしていただろうか。
いつの間にか横になってうとうとしていたらしい私は、夢うつつに玄関のロックが外れる微かな音を聞いた。
これは、夢……?
彼が、帰ってきたの?
ぼんやりとした頭で考えるものの、身体は眠りの世界に戻りたがって、上手く動いてくれない。
カチャっ
そうこうするうちに、リビングのドアが開いたようだ。
貴志さんが帰ってきてくれた。
目を閉じたまま、安堵に頬が緩んだ。
そのままもう一度眠りの世界に潜ろうとしたのだが――次の瞬間、ふわりと自分の身体が宙に浮き上がって一気に意識まで浮上する。