ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない


「まぁああ素敵っ! すっごくお似合いです!」

「そ、そうです、ね。ほんとに素敵……あはは」

スタッフの女性の絶賛に、私はどうにかこうにか引きつった笑顔を鏡越しに返した。そのミモレ丈のAラインワンピースが私に似合ってることは、確かだと思ったから。

裾に向かって紫紺から淡いラベンダー色へ変化していく美しいグラデーションはハッと目を引くし、刺繍を施した総レースの上半身とボリューミーなチュールスカートのコラボレーションはすごくエレガント。

緩くアップにまとめてもらったヘアスタイルとも相まって、まるで2次元のお姫様みたいだと思わずテンションが上がってしまったのも事実、ではあるけど……

いや、ちょっと待って。

問題はそこじゃない。
なんで私、こんなことしてるの?

案内された、明らかにVIPスペースらしきゴージャスな個室にクライアントの姿はなく。
何が何だかわからないまま、事前に用意されていた数着を全部試して一着を選べと言われ、さらには全身エステからヘアメイクまで怒涛の勢いでされてしまったけど。

一体全体どういうことなのか、コーディネートが完璧に終わった今も全く理解できていない。

何を聞いても、「私共はそのようにオーダーを受けただけですので」とにこやかに躱され、誰からのオーダーなのかを聞いても、「後でお会いになれますよ」とバッサリ。

単純に考えれば、私をここに寄越したのが貴志さんなんだから、彼の意志だというのが自然よね。でも……なんで?

< 196 / 345 >

この作品をシェア

pagetop