ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない

「っ……」

なんて正装が似合うんだろう。
そりゃスウェット着てたってサマになる彼が本気出せばこれくらい、当然と言えば当然だけど……。

ストイックさと大人の色気が同居した、隙の無いタキシード姿。
そこから滲む気品と風格はもう別世界の人、と言う感じで。

意識が全部奪われて、みっともなくぼーっと見惚れてしまい――しかしふと、彼の方も、足が止まっていることに気づいた。

私と目が合うと、ハッとしたように視線を外してしまう。

「っ、ちょっと、待ってくれ。今自分と戦ってるから」

意味不明なことを言って片手で顔を覆い、ブツブツ何かをつぶやいている。

え、顔がちょっと赤いみたい。
熱でもあるんだろうか?

大丈夫かなと見守っていたら、しばらくして、どこか眩しそうに目を細めた彼が私の前まで歩を進めてきた。

「……綺麗だ、すごく」

ストレートな賞賛に、お世辞とはわかっていてもドッと幸福感に包まれる。

「っ、あ、ありがとう、ございます」

それでなくても、仕事抜きでちゃんと向き合うのは1週間ぶりなのだ。

すっかり見慣れたと思っていたけど、その間に免疫力が衰えていたらしい。
その美貌を目にするだけで、もう動悸がすごかった。

「た、貴志さんも、素敵、ですね」
「そうか? あぁ、ありがとう」

私と違って、褒められることなんて慣れているだろうに。まるで彼は喜んでいるようにも照れているようにも見えて。

そのまま2人、無言でもじもじと視線を逸らし合う。

ええと……この状況は、一体何?
あの鎌倉デート以来彼は明らかに私の事避けてたし、もう興味はなかったはずじゃ……しかも昨夜は、あのモデルとお楽しみだったんでしょう?
ということは……どういうこと?

混乱する頭をふりふり、とりあえず、と思考回路を整頓する。

「あの……貴志さん? それで、私はどうしてこんな格好をしてるんでしょうか? 説明していただけますか?」

「あ、あぁ。そうだな、すまない」

慌てたように頷いた貴志さんに「とりあえず座ろう」と促され、私たちは部屋の隅のソファへ。
いつの間にかスタッフは姿を消していて2人きりだったけれど、なんとかそれを意識しないようにしながら、勧められるまま私は腰を下ろした。

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