ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない


「はぁっはぁ……っは、……」

会場に駆け戻った私は、片隅の柱にもたれ、荒い呼吸を懸命に整えた。

まさかキララが来てるなんて。

頭の中が真っ白になって、とっさに逃げてきちゃった。
気のせいだったと思ってくれたらいいんだけど……大丈夫だろうか。

「と、とにかく、帰ろう」

あの子が来てるとわかった以上、長居しない方がいい。
会場内で、また鉢合わせするかもしれないもの。

貴志さんに一言言ってから……と柱の影から首を突き出して見渡してみるが、とりあえず人が多くて……まったくダメだ、どこにいるのかわからない。

勝手に帰るのはさすがにマズいよね。
話がある、って言われてるし。

じゃあスマホにメッセージ入れておこう。
お話はマンションに帰ってから聞きます、ってことでいいよね。

考えつつ、クラッチバックに手を突っ込んだ時だった。


「あなたのように美しい方が壁の花とは、実にもったいない。僕と一杯だけ、付き合っていただけませんか?」


唐突にごく近くで声がして、フルートグラスが目の前に差し出された。

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